聖地である高野山は、修行や信仰の場であると同時に、1つの観光地でもあります。
そこには、世界的にも珍しい「寺院群と街の一体」となった風景が広がります。
世界の様々な国から、沢山の観光者が来山しています。
奥の院は、壇場伽藍(だんじょうがらん→壇は土偏なのが特徴です)と並んで高野山内では重要な場所とされています。
参道の両脇には1キロ以上お墓が立ち並び、数々の歴史的人物のお墓があることでも有名です。
マナーとして「死者を弔う場所である」ことを理解してもらった上で、それに相応しい振る舞いを心掛けて欲しいものです。
弘法大師空海の御廟(ごびょう→お墓のこと)敷地内では、脱帽、写真撮影禁止、雑談などは控えるなど、マナーの範疇ではなく「ルール」があります。
それは、今なお弘法大師空海が瞑想を続け、修行の最中であるからです。
邪魔をしてはいけない。
先日、そこを訪れた方と話していました。
その時、奥の院御廟の敷地内にある「みろく石」に沢山の日本人観光者がいてたそうです。
「みろく石」は、片腕が入るくらいの窓のある格子がついた、小さなお堂に置かれています。
この石を片手で持ち上げ、上の段に乗せることが出来れば願いが叶うと言われています。
別名「おもかる石」ともいい、持ち上げたときに重く感じれば心が濁っていて、逆に軽く感じれば心が澄んでいるともいわれています。
観光者の団体は、その石を高いところから落としたり、雑に扱った上に大声で笑うなどしていたとのことで、とても残念な思いをされたと話していました。
また、奥の院でもお賽銭箱の正面に陣取って、ずっとお経を唱え続ける笈摺(おいずる→お遍路さんが着てる白衣)と輪袈裟をつけた団体がいて困ったとおっしゃいます。
日本人でそういう感じなので、外国人にマナーやルールがどうなどとは言えた立場でありません。
外国人は言葉の壁があるため、ミスがあったり理解が及ばなかったり仕方ない場合もあるでしょう。
日本人は言い訳できません。
しかし、観光者だけが悪い訳でもないです。
本山職員も、もう少し毅然と対応してくれたら有難いのに。
最終的には、本山職員が奥の院のお下がりを一人1つという感じで配っていたそうですが、それの奪い合いまで起こっていたそうです。
「仏様たちや、お大師さんはどう思うんでしょうね」と苦い顔で話されていました。
きっと、「やれやれ…」と思われてるでしょう。
しかし、せめて説法などした後に配るなどして、受け取れなかった人には「受け取れないことで動き出す縁」が働くことを説明していればそんなことも起こらないでしょうに…。
色々と残念です。